XENO. BRANDING STUDIO
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deu. nail atelier|ネイルサロンではなく、「アトリエ」をつくる。

2026/9/3

徳島県藍住町にある、deu. nail atelier(デュー. ネイル アトリエ)。

実はこの場所、XENO. BRANDING STUDIOと同じ建物にあります。

建物の半分がXENO. BRANDING STUDIO。
もう半分がdeu. nail  atelier。

夫婦でひとつの建物を半分ずつ使いながら、それぞれの仕事をしています。

だからdeu.は、XENO.にとって少し特殊なブランドです。

一般的なクライアントワークのように、依頼を受けて完成させたものではありません。

サロンオーナーである妻のmahoと、日々話をしながら、少しずつ考え、つくり、変化させてきました。

XENO.がブランド全体の方向を考え、彼女がデザインをつくる。

どちらか一人がつくったというより、夫婦で育ててきたブランドという言い方が、一番近いと思います。


ニュアンスネイルを、ひとつの世界にする。

彼女が昔から好きで、得意としていたのがニュアンスネイルでした。

色が混ざる。
偶然できた模様を残す。
素材の表情を楽しむ。

同じものをもう一度つくろうとしても、まったく同じにはならない。

よく彼女はニュアンスのことを「一期一会。」と表現します。

そんなニュアンスネイルを見ていると、僕にはどこか絵画や現代アートのように見えていました。

だったら、ただ「ニュアンスネイルが得意なサロン」にするのではなく、その感覚自体をブランドにできないだろうか。

ネイル、グラフィック、空間、写真、言葉。

それぞれをバラバラにつくるのではなく、ひとつの世界としてつなげていけば、もっと面白い場所になる。

そんな話を二人でしながら、deu.のブランドを考えていきました。

目指したのは、ネイルに興味がある人だけではありません。

休日に美術館へ行ったり、旅先でギャラリーを覗いたり。

ものを選ぶとき、値段や便利さだけではなく、その背景や佇まいにも惹かれる。

そんな人が見つけたときに、

「ここ、なんか好きだな」

と思ってもらえる場所です。


なぜ、「ネイルアトリエ」なのか。

deu.では、自分たちの場所を「ネイルサロン」ではなく、ネイルアトリエと呼んでいます。

少し変わった呼び方です。

でも、この言葉は最初から飾りとしてつけたものではありません。

彼女が施術するときに大切にしていることがあります。

それは、自分のデザインを押しつけないこと。

お客様が持っている

「こんな雰囲気にしたい」
「この色が好き」
「今日は少し落ち着いた感じがいい」

という小さな意志を受け取り、それを壊さず、少しずつ形にしていくことです。

deu.のシーズンネイルも、完成されたひとつのデザインをそのまま選ぶのではなく、いくつものデザインから好きなものを自由に組み合わせることができます。

ネイリストが完成形を一方的に決めるのではなく、お客様と一緒に考えながらつくる。

僕は、その時間そのものがとても創作的だと思いました。

だったら、そこは単にサービスを提供する「サロン」というより、一緒に何かを生み出す「アトリエ」なんじゃないか。

「nail atelier」という言葉には、そんな意味を込めています。


1席だけの、静かなネイルアトリエ。

deu.には、席がひとつしかありません。

たくさんのお客様を同時に施術することはできません。

効率だけを考えれば、決して合理的ではないと思います。

でも、deu.が大切にしたかったのは、一人ひとりと向き合える時間でした。

店内は、コンクリートの質感を基調とした静かな空間。白を基調としたネイルサロンが多い中で、少し暗めのトーンでシックな世界観にしています。

人の声や視線を気にせず、ネイルをする時間そのものをゆっくり楽しめる場所を目指しています。

徳島県藍住町という住宅地の中にありながら、扉を開けたときに少しだけ日常から離れられる。

そんな小さなアトリエを目指しました。


名前に込めた、「そっと寄り添う」という考え方。

「deu.」という名前は、

dew=雫、純粋なもの
uni=ひとつのもの

という二つの言葉から考えました。

ブランドを考えていく中で大切にしたのは、誰かを大きく変えることではありませんでした。

その人がもともと持っている感覚や好み、意志を尊重すること。

それを乱すことなく、ほんの少しだけ形にする手伝いをする。

deu.では、その姿勢をこんな言葉で表現しています。

あなたという浜辺にある、かけがえのない意志を変えず、乱さず、ただ、そっとなぞる。
やわらかな一雫となって、ほんの一部として寄り添いたい。

そして、

deu.は、ネイルとグラフィックという二つのアートを通して、あなたの内にある、かけがえのない「意志」に寄り添い、探求する。
そんな、あなたと私の小さなアトリエ。

この考え方が、その後につくるロゴや名刺、Webサイト、空間、イベントの判断基準になっていきました。


01|ネーミング・ロゴ

ロゴに込めた想い deu.のロゴは、ニュアンスネイルらしい「流体」「うねり」「揺らぎ」をキーワードに設計しています。

インクがゆっくりとにじむような動きや、水面が静かに揺れるような不規則さ。形を決めすぎず、わずかに揺らぎ続けるその表情を、deu.らしさとしてロゴに落とし込みました。

そこには、ブランドに込めた 「あなたという浜辺にある、かけがえのない意志を変えず、乱さず、ただ、そっとなぞる。」 という考え方も重ねています。

相手を強く変えるのではなく、その人の中にすでにあるものに寄り添い、輪郭をそっとなぞる。

deu.のロゴは、そんな静かな関わり方を、インクや水の揺らぎを思わせるかたちで表現しています。


02|名刺

deu.では、鉱物や石、絵の具が混ざり合うような、素材そのものの表情を感じるネイルを多くつくっています。

名刺にも、その感覚を持ち込みました。

背景には石の表面を思わせるグラフィックを使い、その上にロゴを静かに配置しています。

情報を分かりやすく整理することだけを目的にはしていません。

deu.の場合、名刺もまた小さな作品であり、ブランドとの最初の接点のひとつだからです。

そのため文字組みにも少しアートディレクションを加え、一般的なショップカードよりも、ギャラリーのカードや作品のクレジットに近い佇まいを目指しました。

財布や机の上に残ったときに、

「これ、なんだったっけ」

ではなく、

「あのネイルのお店だ」

と思い出してもらえる。

そんな一枚を考えています。


03|ネイルアトリエが、展示会をする。

deu.を考えていく中で、ひとつ試してみたかったことがありました。

ネイルアトリエが展示会をしたら、どうなるんだろう。

彼女のネイルには、本人なりのテーマや考えがあります。

ただ季節の色を使うのではなく、なぜこの色なのか、どんな空気を表現したいのかを考えている。

だったら、それをサンプルとして棚に並べるだけでは少しもったいない。

作品として見てもらう場所をつくってみよう。

そこから、deu.の展示イベントが生まれました。

展示会とは何だろう。

そんなところから一つひとつ考えます。

入場券のようなステッカーをつくったり、イベント専用のWebサイトをつくったり、会場の様子をリアルタイムで更新したり。

シーズンネイルにも、その年、その季節だけのテーマをつけました。

一見すると、ネイルをすることとは直接関係のないものばかりです。

でも僕たちは、こういう小さな積み重ねがブランドをつくると思っています。

ロゴを見たから覚えてもらえるのではない。

Webサイトだけでもない。

空間、言葉、ネイル、写真、イベント、そこで過ごした時間。

いろいろな記憶の欠片が少しずつつながって、

「deu.って、こういう場所だよね」

という感覚になっていく。

展示会も、そのためのひとつのピースでした。

「ネイルサロンが展示会をする」のではなく、deu.だから展示会をする。

そこまで自然につながったとき、ブランドらしさは強くなっていくのだと思います。


04|Webサイト

Webサイトも、必要以上に説明しすぎないことを意識しています。

派手な動きや複雑なレイアウトで見せるのではなく、写真と言葉が静かに入ってくる構成にしました。

deu.の場合、Webサイトそのものが目立つ必要はありません。

主役は、ネイルです。

そして彼女がつくっている世界です。

余白を広く取り、写真の質感やタイポグラフィを大切にしながら、サイトをひとつのギャラリーのように設計しています。

また、展示イベントでは通常サイトとは別に特設サイトも制作しました。

開催前の告知だけで終わるのではなく、イベント期間中の様子を更新していくことで、実際にその場所に来られなかった人にも、そのときの空気が少し伝わるようにしています。

Webサイトを「情報を掲載する場所」だけで終わらせず、ブランドの活動そのものを残していく場所として使っています。


夫婦だから、完成させない。

deu.は、一度ブランディングをして完成したブランドではありません。

新しいネイルをつくったり、展示をしたり、写真を撮ったり。

日々の小さな出来事の中で、

「deu.なら、こっちじゃない?」

「これは少し違う気がする」

と二人で話しながら、今も変化しています。

仕事場も同じ。
家に帰っても同じ。

良くも悪くも、ブランドについて話そうと思えばいつでも話せる距離にいます。

だからこそ、deu.は僕にとって「ブランドをつくる」というより、ブランドが育っていく過程を一番近くで見続けている場所なのかもしれません。

ネイルと芸術。

まったく違うように見える二つの表現が、同じ場所にある。

そこからまた何か面白いものが生まれればいいと思っています。

deu.はこれからも、二人で少しずつつくっていきます。